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電話情報の院内伝達

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電話情報の院内伝達

『ベッツワンプレス2009春号(Vol.18)』 掲載分

電話連絡をして薬を取りに来られた飼い主様には「○○さんですね。はい、ご用意できております。」とお迎えし、すぐに会計業務が開始できる体制が「常に」整っているでしょうか?
飼い主様がお見えになってから、受付に出た人が「だれか聞いていなかったか」確認するために一度中入っていく…などいう現象は起こっていないでしょうか?
もしも、この電話応対のメモがしっかりと正確に取られ、電話受付⇒調剤室⇒受付応対と移動しながら活用されるシステムを構築できていれば、極めて簡単に冒頭のような素晴らしい応対で飼い主様へ満足をご提供できます。

電話メモイメージ画像

動物病院で電話メモが取れない理由

しかし、診療補助と受付を看護師が兼ねることも多い動物病院では、電話応対の時「メモを取らない」ということも、起こるようです。病院には「カルテ」というデータがあるために、簡単なことはメモを取り、データにして残すという意識があまり高くないからかもしれません。

また、常に受付に人がいないために、電話の子機が診察室や処置室にも置かれ、処置の途中で電話に出るという状況もあるからだろうと思います。看護師は獣医師が処置を待っているという状況の中で、メモを取ると時間がかかってしまうので、早く電話を切らなくてはと焦ってしまうのでしょうか。

電話の内容は記憶にとどめて、処置の後対処するという方法を取る方も相当数いらっしゃいます。ですが…現実に「うっかり忘れていた」「飼い主様のお名前をしっかり聞きとれていなかった」等というミスが頻発してしまう現状が否めません。

獣医師の心理的負担

ミスの処理応対というのは非常に難しいですね。レストランでいうとフロアチーフ、もしくはマネージャーの仕事の範疇です。このレベルの応対ができる能力を「動物看護師としての能力」と両方持ち合わせる方がそう沢山いらっしゃるとは思えません。新卒でキャリア2~3年だと年齢的にも難しいところです。ですから応対のミス処理は「獣医師へ」ほとんどの場合は「院長先生へ」振られていくというのが多くの動物病院のパターンのように思います。

獣医師が症例に向かうエネルギーの大きさを鑑みれば、それ以外の「ミスの処理応対」までも担うということは心理的にも大変な事だろうと察しております。

飼い主様からの情報こそ「データに残す」

少しでも、伝達ミスが少なくなる予防策を講じ、獣医師がより治療に専念できる環境作りは、「スタッフの電話応対のメモを迅速に正確に取るスキル」からスタートします。

カルテはどこの病院でも整然と保管されていますが、「獣医師」の記録ですから、あくまでも診察室、処置室からの発信情報に限られるでしょう。しかし、現実に病院で周知しておかなくてはならない情報は「飼い主様から発信されたもの」が相当多いと思います。獣医師がカルテを記述する必要があるように、病院に集まる飼い主様からの情報もまた、基本的にはメモ一枚でもデータとして残さなければ、「漏れ」や「間違い」が出て当然だと思います。

飼い主様の期待を裏切らない
メモイメージ画像

例えば、薬を今日の夕方取りに行くという電話をかけた飼い主様は、自分が来院した時点で薬は用意されているべきで、支払額の計算もできているという「当然の期待」があるでしょう。ですが行ってみたら、期待はずれで「思ったよりもずっと待たされた」という現象が起こると、ほとんどの方が「不快」になります。

メモが正確にとれていたとしても、それが処置室の電話のそばに置き去りにされていたり、電話に出た人のポケットに入ったままだったりしたら、飼い主様にとっては事前に電話をした意味は全くなくなるし、「私の情報は伝達されていない」つまり、重要な情報として扱われていないという印象を強くしていまいますね。

顧客心理

不快感情を抱えた状態で「お金を支払わせる」というのは顧客心理的に最もストレスをかけることになります。

飼い主様の「事前連絡」はなかったのと同じ現象が起これば、獣医師がどんなに情熱を注ぎ、コストをかけて日頃勉強したことを治療に反映させていたとしても、飼い主様が持ち帰るのは「不快」です。「お待たせして申し訳ございませんでした」と言った程度で解決できるほどの軽微なストレスではありません。これが薬ではなく、フードの発注忘れだったりすると飼い主様は「出直しという罰」みたいな体験を強いられることになるので、ストレスは一段と大きいと思われます。

「はい、○○さん、お待ちしておりました。ご用意できております」と迎えられ、ほとんど待つこと無しにする精算は「人的配慮とリレーション」の上に満足を提供できます。精算時の印象が、すべての結論としての印象になるということですね。

情報伝達のポイント

私はたくさんの病院で現場を拝見させていただきました。すべての病院に適合するとは限りませんが、以下、電話情報の伝達の仕方の「考え方」をご提案いたします。個々の病院で現場展開なさるヒントになれば幸いです。

  1. 1. すべての子機のそばにメモとペンが置いてある。
  2. 2. 外部(飼い主様、取引先等)からの情報は全てメモしてとっておく。
  3. 3. メモは内容に応じて、未処理の状態での置場が決まっている。
  4. 4. メモは処理済み後、処理した人の手で次の処理をする場所に移動される。(例:処置室⇒調剤室⇒受付カウンター)
  5. 5. 全てのメモは処理済み後、必要なデータをピックアップして取り込んだ後破棄される。
  6. 6. 2~5のやり方、伝達の流れをスタッフ全員が周知している。
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伝達には連絡ノートを使う病院も多いと思いますが、「ノート」は見るためには「開く」という手間がかかります。複数の項目が収録されるため、どうしても置場が1か所に限定されるので、自分のデスクを持たない状況では、そこに「全員が行って開いて見る」ことは、それこそ忙しい時には実施されにくく、情報が放置されてしまいます。

一件一葉(一枚のメモに情報は一つ)にして、書きなぐりでもいいから迅速にメモにとり、情報は個別に、フレキシブルに必要な場所に移動させ、内容が業務を遂行しながら常時目に入るところに置き場を決めることをお勧めします。

忙しいのは動物病院だけではない
ペンメモイメージ画像

動物病院は忙しい・・・電話でメモを取っている暇はありませんと、よく言われます。もちろん処置中だとそれができないのはわかります。スタッフ数からどうしても、電話に出る手がないという病院には思い切って、「留守番電話」対応をお勧めします。「処置が終わり次第、かけ直して詳細を確認する」という対応でいいと思います。

処置の手を止めてでも出なくてはならないほど急ぎの電話というのは、ほとんどないのではないでしょうか。何回鳴らしても電話に出ない、電話で伝えたことが正確に伝わっていない・・・こういう状況が起こるよりも、飼い主側としては留守番電話対応でコールバックしてもらい、正確に確実に処理してもらう方が助かると思います。

レストランに予約なしで行っても、注文した料理は速やかに出てくるのは「当たり前」です。店が混んでいて、てんてこまいでも料理が出てくるのが遅いとお客様は不快になるものですね。

オーダーが通ってから調理を始めるレストランのバックヤードはもちろん開店前から仕込みをして、可能な限り早く出せる努力をしています。客席が8割埋まったら、相当忙しくなりますが、調理場の様子は来店客には見えていません。

動物病院の処置室の様子も待合室の飼い主には見えていませんね。忙しいのはどこも同じ。それでも顧客が「事前連絡をして取りに来る」というパターンは、お渡しするまでに相当の時間の余裕があります。提供する側にとってはどんなに楽チンなことでしょうか。この楽チンなパターンで、「待たされる」という状況が起こるとは、飼い主様には「ありえない」感覚があろうと思われます。

動物達が診察を受けられるように…

これまでのやり方でそんなにたくさん文句を言われたこともないのですが・・・と思われるかもしれませんが、日本で育った人の多くは「不快は我慢する」のです。そういう文化だからです。特に「病院」に対しては我慢する人が多く、顧客の不快を認知する機会が少ないために、システムの構築・改善にまで至らないのではと私は感じております。

不快を感じた飼い主様の来院へのモチベーションが下がってしまうと、動物が診察や投薬を受ける機会を失ってしまいますし、トラブル処理にはエネルギーがかかり、全員のストレスになります。伝達ミスなどによる不注意を起こさないように病院でのルールを話し合って決め、みんながそれを守るようにすることで病院への信頼も高まるでしょう。

著者紹介

坂上緑
動物病院接客コンサルタント
坂上 緑(さかがみ みどり)
●動物病院ホスピタリティマネジメント研究会代表
●大阪ペピイ動物看護専門学校非常勤講師
●「マナーとコミュニケーション」「受付業務」等、動物病院に特化した接客セミナー・講演を全国展開
【出版物】
飼い主さんとのコミュニケーション講座
動物病院スタッフのジョブトレーニング講座
書籍、DVD インターズー
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