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ホスピタリティ

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ホスピタリティ

『ベッツワンプレス 2008春号(Vol.14)』 掲載分

室内イメージ画像

「ホスピタリティ」という言葉をお聞きになったことはおありでしょうか?
「心を込めたおもてなし」という解釈が一般的です。
接客応対のプロとしてよく挙げられるのがホテルマンですが、ホテルは「ホスピタル」が語源です。
ホテルで提供するものは、安全、安心、くつろぎ、楽しみ等ですが、これらを提供する飲食業や、航空会社、旅客運輸会社(鉄道・バス・タクシーなど)、テーマパーク等は、「ホスピタリティ産業」と呼ばれています。
業界内では頻繁に使われる言葉ですが、肝心の医療業界では残念ながら、まだ浸透しきっていないようですので、私の見解も加えつつ、お伝えさせていただくことにしました。

サービス産業が目指したのは医療従事者の心構え

ホテル概論では、ホテルマンの基本的心構えとして「ホスピタリティ」という言葉が最初に出てきます。今でこそ、旅はレジャーですが、昔の旅は命がけで、危険にさらされ、緊張の連続でした。知らない土地で不安な気持で疲れ果てて訪れる旅人達を、病気で痛み、苦しみ、不安の中にいる人達に、親切に、優しく、献身的に接する医療に従事する人達の態度を見習って、あのような気持ちで旅人を迎え、接しましょう…という姿勢を「ホスピタリティ」と呼びました。 つまり、「接客業」と言われるサービス産業が本質として目指してきたものが、医療に従事する人たちの心構えだったのです。

ホスピタル産業の特徴として、「目立つユニフォーム」があります。着ているユニフォームを見れば、その人がどういう仕事をしているか、その人の個人情報を持たなくても判断できますね。ユニフォームをきちんと着ていることは、安全、安心を提供しますよという決意の現われなのです。もしも、乗ったタクシーの運転手さんが私服を着ていたら、「え?」とちょっとドキドキしませんか? もしも自分が宿泊するホテルのフロントマンが上着のボタンをかけず、ネクタイをゆるめていたら、そのホテルを選択したことを後悔しませんか? そのホテルの宿泊費が高かったりしたら、怒りすら感じないでしょうか?

つまり…獣医療に従事する方々にもう一度見直していただきたいのが、実はユニフォームの着方です。

クライアントの心理

「心を込めて」応対すれば、お客様の心をつかめる…という時代はとっくの昔に過ぎ去りました。お客様の個人情報を憶え、好みを憶え、クセを憶え…そういう状態を心地良く感じる方ももちろんたくさんいらっしゃいます。ですが、地域密着とはいえ、動物病院に来られる飼い主さんのお住まいの範囲も拡大しています。「近所だから」そこへ行く人ばかりではなくて、車で遠方から来られる方々もたくさんいらっしゃると思います。飼い主さんの個人情報は初診受付票に書いていただいた範囲のみということもあるでしょう。しかし個人レベルでは、日常の行動範囲が広がった昨今、関わる人の数が増大し、人間関係は薄い方がストレスを感じない人達もまた増えています。金銭の受け渡しが発生しているならば、個人の関係ではなくて社会的関係のままで一線を引いておくほうが気楽という受け止め方かもしれません。実際に、複数の病院に通院されていて、他の病院の名前を出されてそこにも通っていますとおっしゃる飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか? そういう方々にとっては「それもまた当然のこと」なのでしょう。

病院側もまた時の経過とともに、院長先生ご自身も、全ての顔と名前を全て憶えていられないほどの数の飼い主さんが来られるようになると思います。関わりの中に個人的な要素が多ければ、応対はカジュアルでもOKなのですが、クライアントの数が増えるごとに、スタッフの数も増え、飼い主さんとスタッフの関係も薄くなっていきますね。病院側からしたらそれもまた当然のことで、お互いにそれが現実です。

一部の飼い主さんが自分にとってより便利で、より心地良い環境へ移動することが何のストレスもなくできるのは、限定された場所で深い人間関係を築かないからなのですが、それは逆から言えば、他から移動してきた飼い主さんは、前の病院よりも「よりよい環境を期待している」ということでもあります。動物病院の応対は、受付業務ですらかなり複雑です。その飼い主さんが一般企業にお勤めで、社会的なルールを規範とする生活を日常していらっしゃるならば、それに合わない応対では第一印象で期待に添うことは難しくなりますね。病院スタッフ全員が平均して、絶対多数の人に共通してご納得いただける応対スキルと組織全体でまわす応対の運営が必要です。

プロ意識とは

ホスピタル産業に従事する人達は少なからず、あるいは徹底的に言葉遣い、立ち居振る舞いの訓練を受けています。航空会社のキャビンアテンダントの接遇スキルの高さはご存知のことと思います。特に日本の航空会社の客室乗務員の応対は素晴らしいと思いますが、飛行機だけでなく、新幹線の車内販売の人達の応対スキルが以前と比べ物にならないほど高くなりました。漫然としていると見逃してしまうでしょうが、機会があれば、目をとめてご覧ください。どの人も髪はしっかりと纏められ、ユニフォームを着崩したりもしていません。更に素晴らしいのは、彼女達が列車に乗り込む前にホーム、プラット一人で立っている時の「立ち姿」です。 腹筋をしっかり伸ばし足をそろえ、胸を張って、「研修で習った通り」に立っています。

彼女達の仕事は車内でお茶やお弁当を売ることですから、「立ち方」なんて、どうでもいいような感じもしますが、実は非常に重要なことです。なぜなら、ユニフォームを着てきちんと立っている人はそれが自然な光景なので、気にならないのですが、だらしなく、立っていると、とても目を引くからです。彼女達は自分達が働く場を提供してくれている鉄道会社のビジョンを「自分達がイメージとして担っている」ということを理解しているから、教えられたように立って、スタンバイするということを実行できるのです。教えられたように立つだけなら、スキルとしては簡単ですが、「管理者がいなくても必ず実践する」ところがすごいのです。雇われている人達は、なかなかこういう風にはしてくれないものですから。

「立ち方」はもちろんスキル研修の結果ですが、彼女達は販売を始める前にすでに「仕事をするためにここで今、立っている」という意識を持っています。このような「意識」を持たせる教育を「マインド研修」と言います。彼女達には「スキル研修」と「マインド研修」の両方の成果が現れているのです。

このように現場に出ていても、経営者の求めたことや、コストをかけて教育されたことを、手を抜かず、果たす動機となるのが「プロ意識」です。このプロ意識を根底で支えているのが、ホスピタリティマインドだと私は思っています。「お客様の満足を目指して」と口で言うのは、簡単なことですが実行に至るには、マインドが必要なのです。

サービス業全体がこのマインドを医療に従事する方々から学びました。その上で、接客スキルを開発してきたのが主にホスピタル産業界の人達です。接客スキルの開発=人材開発だと申し上げて過言ではないと思います。獣医療に携わる方々にも、そのマインドを伝えるスキルを身につけられる機会が多く訪れることを願っております。

犬イメージ画像

著者紹介

坂上緑
動物病院接客コンサルタント
坂上 緑(さかがみ みどり)
●大阪ペピイ動物看護専門学校 マナーとコミュニケーション講師
●株式会社葉月会 北摂夜間救急動物病院 顧問
●動物病院に特化した接客セミナー、講演を全国展開
【出版物】
『飼い主さんとのコミュニケーション講座』
書籍、DVD (インターズー)
『動物病院ジョブトレーニング講座』
書籍、DVD
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