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犬の心臓病と腎臓病

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犬の心臓病と腎臓病

ドクターズアドバイスペピイドッグ2015春夏号

犬の心臓病と腎臓病
教授 竹村直行

腫瘍(がん)、心臓病、そして腎臓病は「犬の3大死因」と言われています。
心臓は全身に血液を送りだすポンプのような働きをしています。
腎臓は心臓が送り出した血液を受け取り、血液中の老廃物を効率よく尿にろ過しています。
日頃、心臓病や腎臓病の研究に取り組み、同時に病院でこれらの病気に苦しむ動物の診察をしている立場から犬の心臓病と腎臓病の予防と対策について解説します。

犬の心臓病について

心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)になったら

犬の心臓病とは、どんな病気?

 犬は様々な心臓病にかかりますが、最も多いのは僧帽弁閉鎖不全症という、心臓弁膜症の一種です。
この病気は特に中年期以降の小型犬に多く発生しています。
古くは肥満、食事(特に高塩分食)などがこの心臓病の原因と言われていましたが、今はこれらは原因ではないことが判っています。
多くの専門家たちはこれらの病気は遺伝すると信じています。つまり、遺伝子の異常が原因だろうと言うわけです。
そして、異常な遺伝子を発見しようと世界中の研究者が懸命になって調べてきましたが、残念なことに遺伝子異常は未だに確認されていません。

予防と対策

 原因不明なため、効果的な予防対策をたてることができません。そのため早期発見、早期治療が重要になります。
特に8歳を過ぎた小型犬は、最低でも年に1回は健康診断を受け、必ず心臓の雑音の有無をチェックして貰いましょう。
早期の僧帽弁閉鎖不全症では、心臓から雑音が発生しているだけで、症状が全く見られません。唯一の確認法は心雑音のチェックです。
病気が進行すると、散歩や運動中に疲れやすくなったり、直ぐに休みたがる、喉になにかがつっかえたような大きな咳が続くなどの症状がでます。
このような症状がみられたら直ぐに病院で診察を受けることを強くお勧めします。

 治療についても説明しましょう。

 僧帽弁閉鎖不全症の治療は大きくお薬を飲む(これを内科療法とも言います)、そして手術に大別できます。
我が国でも、少しずつですがこの病気の手術を実施する病院が増えています。手術の費用や成功率は各病院にお問い合わせ下さい。
お薬は主に血管を広げて心臓が楽に血液を送り出せるようにする血管拡張薬、心臓の動きを力強くする強心薬、そして、むくみを抑えるための利尿剤(尿がたくさん出る薬)に大別されます。
病状に応じてこれらのお薬のうち1種類から数種類を使います。それから食事療法も大切です。
主に塩分を制限し、蛋白質を強化した食事が理想的です。心臓は筋肉でできていますが、この筋肉の主成分は蛋白質です。
したがって、栄養面で心臓をサポートするためには蛋白質がとても大切です。
我々人間と同じように、最近の研究により犬でも、心臓病になったら体重を落とさない方が長生きすることが判っています。
体重減少に注意しましょう。

心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)になったら

心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)になったら

心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)になったら

 日常のケアはこの重症度によって違ってきます。
この病気の重症度は大まかに、
●症状はまだ出てない
●咳、息切れ、散歩や運動すると疲れるなどの症状が出ている
●安静にしていても呼吸が速く、苦しそうになる
という3段階に分類できます。
症状が出ていない動物でも、お薬(通常は1種類で十分です)は必要ですが、散歩や運動を制限する必要はありません。
この段階の動物では日常生活で何か制限することはありません。
半年から1年に1回程度のペースで心臓の検診(レントゲン検査や心エコー図検査)を受け、治療方針を見直す必要の有無をチェックしましょう。
症状が出るようになっても、一般に運動を制限する必要はありません。体重低下に気をつけ、もしその兆候が見られるようでしたら、その原因を病院で調べて頂きましょう。
この段階になると、1種類のお薬だけで治療するのが難しい場合が多くなり、2~3種類のお薬が必要になります。
安静時でも息苦しそうになったワンちゃんでは、利尿剤と言って尿をたくさん出せるお薬が必要になることがあります。
お薬の力で強制的に大量の尿を出させ、身体のむくみをとり、同時に心臓の負担を軽くするわけです。決められた場所以外で排尿してしまうことがありますが、決して怒らないで下さい。
トイレで排尿しようと思っても、間に合わなかっただけのことです。たくさん尿が出れば、当然のこと水をたくさん飲むようになります。
水を飲まないでいると脱水してしまい、腎臓の機能が低下する恐れがあります。飲みたくなった時に、いつでも水を飲めるような環境を心がけて下さい。

犬の腎臓病について

犬の腎臓病とは、どんな病気?

犬の腎臓病とは、どんな病気?

 心臓病と同様、犬の腎臓病にも色々な種類があります。
このうち、原因がハッキリと判っている腎臓病は多くありません。つまり心臓病と同じで、予防策を講じることができません。
最近の研究により、歯周病の犬は腎臓病にかかりやすいことが確認されました。
このため、日頃から歯石を予防するための歯磨きは、腎臓病の予防策として大切だと思います。
しかし、歯周病でない犬も腎臓病にかかりますから、腎臓病の原因は歯周病だけではないと言えます。心臓病と同様、早期発見・早期治療が大切です。
様々な腎臓病がありますが、共通していることもあります。それは「最初は尿検査のみに異常が出る、少し進むと血液検査にも異常が出る、そして最終的には症状が出る」という点です。
腎臓病の早期発見には尿検査が重要です。
心臓病の対策として先ほど「最低でも年に1回は健康診断を受けましょう」と書きましたが、この健康診断の際に腎臓の検査も受けるべきです。
心臓病と同じように、腎臓病も「早期発見・早期治療」が大切です。早期発見には尿検査が重要です。
腎臓機能は脱水により低下します。このため、日頃から食器に水を絶やさないように注意しましょう。
また、ユリ科植物やぶどう、レーズンは腎臓にとっては「猛毒」ですので、これらには近寄らせないように心がけることも大切です。
最も大切な治療法は食事療法です。蛋白質、リン、そして塩分を制限したフードが理想的です。
また、腸内で発生する老廃物を吸着させる吸着剤も有効です。
腎臓病が原因で血圧が高い動物や尿中に蛋白質が大量に出ている動物では、ある種の降圧剤(血圧を下げる効果のあるお薬)が有効です。

腎臓病になったら

腎臓病になったら

腎臓病になったら

 大部分の場合、動物の腎臓病は当初は症状がありません。
治療や余命のことを考えると、症状が出ていない段階で治療をスタートした方が絶対に良いと思います。
腎臓病に関連した症状(食欲不振、体重減少、貧血、嘔吐など)は、腎臓機能が相当低下した結果として出ます。
こうなってしまうと、治療は難しいことが多く、また余命も限られていることが少なくありません。
動物の腎臓病は大まかに、尿に大量の蛋白が出てしまうタイプ、そして濃い尿を作れず、尿量が増え、そのために飲み水の量が増えるタイプに分けられます。
どちらのタイプの腎臓病なのかは、尿検査で確認できます。
前者の場合は、高血圧も見られることが多く、蛋白尿に加え高血圧の管理も必要になります。
一般に、血管を広げるお薬と蛋白質を制限した食事により治療します。
このため、おやつやご褒美を与える場合、蛋白質を多く含む食材は絶対に避けるべきです。
後者の場合、水が飲めないとあっというまに脱水してしまいます。
このため、飲み水用の器を複数個所に置く、器は大きなものにする、水を切らさないように心がけるなどの対応が必要です。
心臓病でも腎臓病でも、「お薬をキチンと飲めたら、あるいは食事をちゃんと食べられたら(少し大げさに)褒めて下さい」と私はご家族に良く話しています。
人間の子どもと同じで、私は動物も褒められると嬉しくなり、もっと褒めて貰おうとすると思います。
またインターネットの情報は過信しない方が良いと思います。みなさんのワンちゃんの様子を最も熟知しているのは、かかりつけ医の獣医師のはずですから。

心臓のお守りはネクタイ

 日本では徳川幕府が成立して間もない1656年、当時のフランス国王であるルイ14世は外人部隊としてクロアチア人兵士が花の都パリを行進した時、彼らは全員、色鮮やかに薄手の布を首に巻き、のど元で結んで、あまりは胸に垂らしていたそうです。
当時のクロアチアでは、首に布を巻いておくと心臓が守られると信じていたそうです。彼らの姿が気に入ったルイ14世は早速、フランス軍の制服に導入したのですが、これがネクタイの始まりと言われています。
フランス語でネクタイはクラバットcravateというのだそうですが、これはクロアチアの騎兵隊を意味するクロアットが訛ったものと考えられています。
私は冬になると首にマフラーを巻きますが、もしかしたら冬場のマフラーには心臓を保護する効果があるのかもしれません。
首にスカーフを巻いているワンちゃんを見かけることがありますが、可愛らしく見える効果に加えて、心臓を守る効果があると期待したいものです。