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動物看護職の公的資格化に向けて

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動物看護職の公的資格化に向けて

『ベッツワンプレス 2012夏号(Vol.31)』掲載分

動物看護職の公的資格化に向けて

山根義久氏

2012年4月、「認定動物看護師」1期生が誕生してから、約2ヶ月が経過し、次年度の試験概要や移行期間の措置など、さらなる普及に向けて準備が整えられつつあります。

今回は、これからの公的資格化に向けた展望も含めて、認定を行う動物看護師統一認定機構(以下 機構)から、代表者でもある機構長 山根義久先生(公益社団法人日本獣医師会 会長)と、幹事長 兼 統一認定委員会資格認定小委員会委員長 細井戸大成先生(公益社団法人日本獣医師会 職域理事)にお話を伺いました。

動物看護職の公的資格化は、動物看護師のみならず、獣医師をはじめ獣医療に携わる者にとっての永年の希望でもあります。といいますのも、人の医療の質的向上を支える一因として「チーム医療」というものがあります。これは、看護師など20種以上の医療専門職が公的資格化され、医師と共にチームとなって医療提供を行うものです。これにより、各専門分野において、より高度化した医療提供を可能にする体制が整えられているのです。
 
一方、獣医療界での国家資格は獣医師のみです。獣医師と他の獣医療従事者が連携して実施するチーム獣医療体制を構築し、獣医療提供の質的向上を目指す為にも、動物看護職の公的資格化は欠かせないものです。

公的資格化に向けては、「知識と技術の高位平準化」と「第三者による公明公正な認定実施」が必要です。これまでバラバラだった教育、認定を行う各団体の協力もあり、統一した試験問題の策定が行われ、昨年9月には当機構が設立され、統一的な資格認定を行う環境が整えられました。

先ずは、この取組みを普及させていくことに全力を注いで参ります。しかし、器を作るだけでは不十分です。当事者でもある、動物看護師の方々には意識を高め、一層の研鑽に努めていただかなければなりません。

公的資格化は、職域の改革にもつながり、各診療施設においては充実した獣医療提供などの質的向上が期待され、産業動物や野生動物の分野においても、そのスキルが求められる場面は多々あり、公衆衛生の面での活躍も期待されます。つまり、動物看護師というライセンスが、幅広く全国民のためになる資格でもあるということです。

今後、そういった知識、技術を持った方々の雇用を推進し、就業環境を整えていくことも課題となってまいりますが、先ずは、現職の方々が社会的価値の高い専門職としての自覚を持ち、多くの方に統一資格認定を受けて頂くと共に、一層の向上心を持って日々の研鑽に取り組んで頂きたいと思っています。そして、この取組みを広く普及させていく為にも各診療施設に従事する皆様にご理解とご協力を頂きますようお願いいたします。

初めての統一試験を終えて、率直なご感想は?
細井戸大成氏

先ずは、民間の動物看護職認定5団体が、それぞれに違いがある中で互いに歩み寄り、協働して統一試験を実施していただけたことに、心から感謝しています。そして、受験された現職看護師の皆様や学校関係者の皆様も、色んな不安がある中でも、しっかりとした準備をされ、3,922名もの方が合格されたことは、驚きと共に、皆様の日頃の努力の賜物でもあり、本当によかったと感じています。日本獣医師会としても、既存認定団体、教育機関、獣医学会、日本看護職協会とも連携し、より公正な立場で認定を行う機構設立に尽力して参りました。本年度は機構の主催試験ではありませんでしたが、初めての統一試験ということもあり、合格者に対して認定動物看護師の資格認定を機構として行ったことは、大変意義があることと思っています。

来年2月に機構主催の統一認定試験が開催されるとのことですが、
詳しい内容は決まっているのでしょうか?

まだ日程などの概要が決まったところで、詳細についてはこれから各小委員会で詰めていくことになります。

ただ、これは資格認定試験であり、入試などの選別試験ではありませんので、必要な知識をきちんと習得しているかを公正に評価できるような問題の作成や試験方法で実施することを念頭に置いて作業を進めています。

獣医師国家試験※注1に準じた正答率、合格ラインを定めることで、将来の公的資格化を視野に入れた試験内容にしていくことを目指しています。試験方法についても、従来のマークシート方式に加え、コンピューターを用いた試験を導入する予定です。初めての試みでもあり、次年度は対象者を限定した形での実施を予定していますが、近年、理学療法士や情報処理系の国家資格の試験でも用いられているCBT※注2(Computer Based Test)形式での運用を考えてのことでもあり、今後本格的な導入に向けて検討していく予定です。

※注1/獣医師国家試験では、必須項目は70%、それ以外では60%の正答率を合格ラインとしており、不適切な設問が判明した場合は、除外するなど、必要な補正を行って採点している。

※注2/大量の問題群から必要数をコンピューターが自動的に選択し、受験者の画面上に問題を出す仕組み。これにより運用方法次第では、いつでも、どこでも受験することができるようになり、印刷物よりも鮮明な画像を使える為、微妙な色目の違いを識別するような問題も扱うことができる。

「書類審査」受験についてお聞かせください。

全国で動物看護師として働く人は、約2万人近くいるといわれています。もちろん、全ての現職の方々に、「認定動物看護師」の資格認定を受けて頂きたいと思っていますが、勤務の都合や遠方であるなどの理由で、どうしても受験できないという方もいらっしゃいます。

現職の方々は、飼い主様の安心と動物たちの健康のため、これまでの経験を活かしつつ、日々自己研鑽を重ねながら、動物看護師としての仕事に従事されています。中には二十年を超えるキャリアを持つベテランの方もいらっしゃいます。そんな方々のこれまでの実績を認めつつ、知識、技術の進歩が速い現代においては、常に新しい知識を吸収することも求められます。それらを実践されている方々であれば、試験に合格するのに値するだけの知識、技術を持った方であるとの考えから、2017年3月31日までの移行期間を設け、その間の移行措置として「書類審査」受験による認定を行うこととしました。

これは、これまでの勤務実績や自己研鑽に関わる取組みをポイントで示し、期間中で合算したポイントが一定の基準に達した場合、所定の手続きを行えば、「認定動物看護師」の資格認定を行うというものです。ここで言う「自己研鑽に関わる取組み」というのは、動物看護師の知識、技術に関わる、機構が認定する「一定の講習」の受講歴を対象としています。対象となる講習等は、順次機構にて審査を行いHPで公開していきますので、そちらを参照してください。これにより、より多くの方に認定を受けていただける機会が増えると考えていますが、今の自分の知識、技術レベルを確認する意味でも、試験を受けて合格していただくことを推奨しています。

今後の課題についてお聞かせください。

この動物看護職の公的資格化にむけた動きは、将来のチーム動物医療体制の確立に向けて、欠かせない一つの要因です。家庭動物が家族の一員、地域の一員として認識されつつある中、各地の動物病院が担う役割は、単に病気を予防、治療することだけでなく、飼い主様への安心の提供など、多様なニーズへの対応が求められています。今の制度のままでは、獣医師だけでは十分に応えきれず、良質な動物医療の提供が困難になってきています。又、動物看護師の知識、技術のバラツキは、安定した動物医療の提供を困難にする要因にもなります。だからこそ、獣医師と動物看護師の役割を明確にし、チーム動物医療の体制を築き、飼い主の皆様が安心して動物医療を受けられるようになることが、人と動物が共生する社会の実現に向けて不可欠だと考えています。
 
今後の課題を挙げるとすれば、機構は、公明正大な試験運用と認定の実施と共に、資格認定を一層普及推進していくことです。又、各動物病院において「認定動物看護師」の資格を持つ有能なスタッフを積極的に雇い入れるような働きかけも今後必要になってくると思います。しかし、なにより大切なことは、現職の動物看護師自身の意識、考え方を高めることにあると思っています。一人一人が新しい知識を積極的に取り入れ、研鑽を積む努力を継続することで、周りからも認められ、自分たちの職域を確立することにもなります。是非、現職の皆様方に当事者意識を持って頂き、より多くの方に資格認定を受けて頂きますことを、切に願っています。

私たちペピイも、飼い主様と動物たちの幸せのためにがんばっている動物病院と、
そこで働く皆様を応援しています。