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自信を持って飼い主と向き合う

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自信を持って飼い主と向き合う

『ベッツワンプレス 2009秋号(Vol.20)』 掲載分

病院の主軸として診察に当たっていたり、新人であったり、勤務医の先生の様々な立場でそれぞれ飼い主様の応対についてご質問をいただくことがあります。
今回はその中から現場で飼い主様との応対体験の少ない先生のご質問について少し掘り下げてみたいと思います。

電話メモイメージ画像

ある症例について、獣医師としての知識をお持ちの方なら概論的説明はできるでしょう。ですが、山田さんの飼っている、7歳の雌のポメラニアンの症状について、初めて山田さんと診察室や電話で話す時、山田さんのあらゆる質問に答えられるとは限らないですね?自分が基本の問診や、体調チェックだけをして、その後は院長や担当獣医師に代わるような段取りになっていたとしても、飼い主さんは、「獣医師の先生」と見るや、一方的にありとあらゆることを質問してこられることも多いと思います。例えば、原因を聞かれたり、今後どういう治療をしてどれくらいの期間、または費用がかかるのかなど、院長や先輩の先生からの情報なしには、お手上げのこともあるようです。

心の不安が動機となる応対

そんな時、「獣医師として答えられない、またはわからない」ということが、相手に伝わってしまうことに不安を感じる・・・ということがあるようです。このような場合のとりがちな応対には二つあると思います。

一つは、自分の知識の範囲で、概論的な説明を始めてしまうこと。そうすると、できるだけ正しく、更に漏れのないようにという意識が働くので、説明が長く、難しくなってしまいます。また、その症状にとって、獣医療的にベストな改善方法を提案されたとしても、飼い主さんがそれにかかる費用や、費やせる時間などにストレスを感じるとしたら、それは「応対」としてはベストではなくなります

飼い主さんの中には獣医師の先生には「NO」と言いにくい方もいらっしゃいます。そのようなタイプの方は、黙って来なくなるということにもなりかねません。動物病院の獣医師にとって最も重要なことは「飼い主さんがストレスなく受け入れられる提案できるかどうか」ではないでしょうか。これは個々の飼い主様についての理解ができない限り、できません。

もう一つは自分が獣医師であることを明らかにしない、積極的に伝えないという方法。例えば電話に出るとき「獣医師」と言ってしまうと飼い主さんからいろいろ質問をされたり、状況説明をされて、判断を仰がれたりして困ってしまうので、すぐに答えられないと、飼い主さんにも、病院にも迷惑をかけるような気がして「獣医師とは言わないんですよ」という先生もいらっしゃいます。確かにそうすれば、「困る会話」は回避できるかもしれません。ですが、そういう方法だと、自分が獣医師としてせっかく現場で体験できることを放棄してしまうことにならないでしょうか?また、自分が「獣医師」であることのモチベーションが高まるでしょうか?職業人として、自分が自分を獣医師であると認めることなしに、獣医師としての振る舞いはなかなかできないでしょうし、責任感も培われないと思います。

わからないことを受け入れて対応策を準備する

いずれにしろ、不安が動機となる言動は相手にとっても、自分にとってもいいことをもたらしてはくれません。私が新人の先生方にお伝えしたいのは、わからない、判断が下せないというのは、能力がないということではないということ。現時点で判断を下すだけの情報が自分にはそろっていないというだけのことです。

当然ながら、どんな職業においても、「経験」から判断することは非常に多く、どんなに知識を積み上げても、キャリアが浅いうちはわからないことが山ほどあって当然のことです。まず自分がその「当然」を受け入れることから入れば、獣医療の知識や技術だけはなくて、人との応対ノウハウについても興味がわくのではないかと思います。

学生時代は答がわからないと点数はもらえませんでした。ですが、社会生活の大半は始めのうちは「わからないことしかない」と言っても過言ではありません。ですが、答えそのものはわからなくても、わからない時に、どうするか、また、これが非常に重要ですが「わからない状況を作らない」ようにするにはどうするかを、知っていれば、社会生活ではクリアできることもたくさんあります。なぜなら、社会生活では自分がわからないことを、わかる人と一緒に仕事をしているからです

「動物病院で働く獣医師」にとって、獣医療以外に必要なスキルとは何かを認識し、訓練することが、獣医師としての能力を最大限に発揮できることにつながると思います。例えば、自分側の情報を明確に迅速に伝えたうえで、自分の事情も相手に理解をしてもらえるかどうかもコツの一つです。

待たされて診察室に入れば、獣医師の先生が現れて、「ハッピーちゃん、今日はどうされました?」と聞かれたら、担当獣医師や、院長診察に拘る人以外は、あれも言いたい、これも言いたいとなるのは飼い主さんの心理としては当然のこと。自分が取るのが問診だけなのだったら「山田さん、こんにちは。獣医師の○○です。まずは問診をとらせていただいて、その後担当獣医師(院長)と代わりますね」と、まず「こちらの段取りの説明」から、アプローチできているでしょうか?

電話であれば、「山田さん、後ほど担当獣医師(院長)に伝えますので状態の確認をさせてください。カルテを出しますので、ワンちゃんのお名前もお願いします」「山田さん、お待たせいたしました。山田ハッピーちゃん、ポメラニアン、7歳の女の子で間違いないですか?はい、では、いくつか質問させていただきますね」と獣医師として自分が仕切りながら会話ができているでしょうか?

自分が診察をしている時であれば「可能性として、こういうことが考えられます。検査をしてみないと確かなことはわからないですね。検査の費用は○○円です。○分ほどお待ちいただくことになるかと思いますが今日お時間があれば、検査されることをお勧めします。」「お急ぎでしたら、次回いらした時に、おっしゃってください。じゃあちょっと○○(別の場所)も診ておきましょう」

電話メモイメージ画像

飼い主様に必要な情報を与える、飼い主様に即答を迫らず検討する時間を与える、等、ポイントがわかっていれば、自分なりの会話パターンが構築されていくと思います。

以上、サンプルで出した応対会話のような内容が、すらすら、はきはき、言えるでしょうか?

これくらいの量のことを、ある程度流暢に敬語を用いて言わなければ、飼い主さんが話しているペースをコントロールできなくなります。はきはき発声できなければ、話している内容に説得力がなくなります。もしも、まだ、できていないと感じるならば、不足しているのは「社会人としての話力」です。自分で時間をとって、訓練すれば身に付きます。

飼い主さんが、獣医師の先生は動物の病気については何でも知っていて答えてくれて、当たり前と感じるように、私自身は接遇コミュニケーションをテーマにしたノウハウを提供したり、実際に指導する仕事にしていますので、とてもコミュニケーション能力にたけていて、接客もすごくうまくて、私が接客すれば、どんな人でもうまくこなし、クレームなど発生せず、みなさんにご満足いただける応対ができると思ってくださる方がとても多いです。

しかし、現実にはそんなことはありません。人並みに人間関係においてはトラブルも起こるし、私がこれまでの経験をもとに動物病院で接客しても、クレームが出ることはあると思います。30年近く同じ職業についていても即答できないこともあるし、とてもその場では簡潔に回答できない質問を受けることもあります。

「自信」とはうまくできることではなくて、うまくできなかった時の解決案をいくつか持っていること、更に、次は改善した自分で臨むために、準備するべきことの優先順位をつけられることだと思います。それができれば、トライアルに感じる恐れがかなり軽減してきます。恐れを少なくする工夫をすることで、実行できる自分へと成長できるのではないでしょうか。

著者紹介

坂上緑
動物病院接客コンサルタント
坂上 緑(さかがみ みどり)
●大阪ペピイ動物看護専門学校 マナーとコミュニケーション講師
●株式会社葉月会 北摂夜間救急動物病院 顧問
●動物病院に特化した接客セミナー、講演を全国展開
【出版物】
●飼い主さんとのコミュニケーション講座
●書籍、DVD (インターズー)
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