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院長に聞く!動物病院の成長マネジメント 高橋犬猫病院

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院長に聞く!動物病院の成長マネジメント 高橋犬猫病院

『ベッツワンプレス 2015夏号(Vol.43)』 掲載分

院長に聞く!動物病院の成長マネジメント

私たちを取り巻く社会環境は刻々と変化しています。今後予測されている人口の減少(少子高齢化社会)と犬、猫の飼育頭数の減少、高いレベルの動物医療を望む飼い主の増加、飼育環境の改善や適切な動物医療による長寿化など、地域の動物病院、獣医師、動物看護師にもこれらに対する多様な対応が必要になっています。
この「動物病院の成長マネジメント」シリーズでは、動物病院・院長先生へのインタビューを通して、実際に行っている取り組みや事例の紹介から、「動物病院」が一層発展するために必要なポイントについて考えてみたいと思います。

 
高橋犬猫病院 高橋犬猫病院 高橋犬猫病院 副院長 高橋一成先生
高橋犬猫病院 副院長 高橋一成先生

獣医師を目指された動機は?

 中学生の頃からでしょうか… 小さい時からこの環境で育ちましたので、自然と獣医師になるのかなという感じでした。

高橋犬猫病院にはいつから?

1991年に大学を卒業しました。その後2年間、東京大学獣医内科学教室で研究生として内科学を勉強し、別の病院で勤務医を経験してから、高橋犬猫病院には1994年から勤務しています。

 

「院長=父親」の病院で一緒に診療することで困ったことはありましたか?

困ったことばかりですよ(笑)。毎日ケンカばかりでした。注射の仕方ひとつ、診療についても、薬品や医療器具の購入にしても細かくなんだかんだと。

でも、その問題もうまく乗り越えた?

病院を引き継ぐかどうか以前に、まず院長(父親)と私との二人でこの高橋犬猫病院の診療業務をスムースに行うことができるか、という問題があると思います。実際いろいろなことがありましたし、関係がギクシャクしたこともあります。ただ、病院を運営して行く上での「基本的な方針・考え方」には違いがありませんでした。山を登るにしても、右から登るか、左のルートを選ぶか、その違いはあっても、登る山が同じであれば、目標が違わなければ、そこはお互いが折り合いをつけてやっていくしかないかなと。その時は意見が違っても、後で認め合うことで解決していけますので、なんとか続けてくることができたと思います。

院長と共有されている「基本の方針・考え方」を教えていただけますか?

目指しているものは、来院される飼い主様が望むことに対応すること、できるだけ、近いものを提供することでしょうか。そのために、飼い主様から話をお聞きする時間を大事にしています。問診だけでなく治療の方針や投薬の説明、飼い方やしつけ、歯みがきといったケアについても十分に時間をかけています。言葉だけでは伝わりにくいことは、ボード等のツールも用意しています。私に直接聞きにくいことがあっても、スタッフが対応してくれればそれでいいと。高度医療を目指すのではなく、もし、私の病院では対応できないこと、わからないことがあれば、それができる別の病院を紹介すればいい、そういったことも含めて高橋犬猫病院は地域に根ざした、信頼されるホームドクターになるという考えです。院長も私もこれは全く同じでした。

 

1994年に戻られた後、病院を引き継がれたのはいつですか?

実は明確に「いつから引き継いだ」ということではないんです。2000年(平成12年)に院長が埼玉県の獣医師会長になり、病院を空ける時間が多くなりました。そのため、その頃から病院を徐々に任されるようになりました。いずれ院長(父)からこの病院を引き継ぐという覚悟というか…、それは最初からありましたが、いつの間にか引き継いでいた、というのか本当のところです。まだ私は「副院長」の立場ですし、病院の財務面を含め引き継いでいかねばならないこともまだまだ残っています。

父親から病院を引き継ぐことについてはどのように考えておられましたか?

大学の時から、「2代目はいいね」とよく言われました。実際、その通りなんですよ。長く病院を続けているわけですから相応の信頼も得ている、来てくれる飼い主様もいる、設備も最新のものではなくても、揃っている。恵まれていることは事実です。どれも院長(父親)や病院スタッフの努力の結果なのですが、まずこれらを受け止めることが大事だと思います。その上で、「獣医師」としての自分自身をどう高めるか、そのためにどのように努力をするかが問われると思います。
 1994年に戻ってからも、多くの先生方、病院を訪ね勉強させてもらいました。翌年の1995年、病院の改装を行いましたが他の先生から学んだ病院運営のハード面、ソフト面について多くを反映させました。その費用の回収についても、自分が頑張るしかないと。先にお話しした「病院の基本方針」にもつながりますが、飼い主様の望む治療や検査、手術のすべてに対応することは、現実には難しいことですので、自分とは違う分野で得意な先生を紹介できるようにつながり、というかネットワークをつくることもずっと考えていました。「恵まれている」立場である分、認められるためには自分で頑張ることしかないわけですから。

これからの病院経営についてはどのような考えをお持ちですか?

最近、特に犬の飼育頭数の減少が動物医療の現場で話題になっていますが、私の病院でも子犬の来院が本当に少なくなくなりました。ペットショップでも、複数の店舗を展開しているところは獣医師を雇用するなどしてワクチンやフィラリアの予防、健康チェックを自前のサービスとして提供するところが増えていますね。飼育頭数に関するデータ資料を見ても、これから来院数をどう確保していくかは動物病院の大きな課題だと感じています。また、ペットの高齢化と並行して来院される飼い主様も高齢になってきていること、病院でも獣医師や動物看護師が思うように集まらない、雇用できていないこと等も、現実の課題として捉えています。色々な課題が多いですね。
 先にお話ししましたが、私は「地域のでホームドクター」であることを一番大切なことに置いています。地域の皆様に必要とされ、喜んでもらい、ずっと永く受け入れてもらえるようにするためにどうすれば良いか、それをいつも考えています。そのためにも、獣医師として技術や知識の向上には継続して取り組まねばなりませんし、それはスタッフも同じです。また同時に飼い主様とよく話をすることも心がけています。

待合室の設置されている大型のサイネージ。スタッフ紹介、季節のケア等来意の飼い主様向けの案内やインフォメーションに活用しています。

2005年に建築し、2009年にリニューアルしたトリミングとペットホテルサービスを提供する「ペットサロン  サンタ」。 病院に併設されています。

まだまだ十分ではありませんが、その日に来院される飼い主様、ペットの情報を全員で共有するようにしています。手術の予定を入れている方には、食事や体調についてスタッフ全員で配慮することができます。どんな理由で来院されたのか、注文したフードをとりに来られた方なのか、ペットホテルやトリミングサービスを利用して頂いた飼い主様が迎えに来られたのか、ペットのどんな症例で来院されたのか、心配なことは、気になることは何か、こういったことを病院のスタッフ全員で把握することができれば、より良い対応が可能になります。飼い主様と一緒にペットの名前を呼んでご挨拶する、応対すること、それだけでもずいぶんと印象は違いますし、スタッフも緊張感を持って対応することができます。
 「飼い主様ときちんとコミュニケーションをとる」動物病院として一番の基本であるこのことを疎かにしないよう、緊張感を持って、飼い主様、ペットと誠実に向き合っていきたいと思います。地域のホームドクターとして、気軽に何でも相談できる、話せる病院でありたいですね。

高橋犬猫病院

高橋犬猫病院 院長 高橋三男先生

高橋犬猫病院 院長 高橋三男先生

 私は動物が好きという理由から獣医師を職業に選びましたが、親から大切な財産を頂けたことでこの場所で開業することができました。開業した頃はペット、小動物の医療ニーズもまだまだ小さく、この地域も獣医師が一人いれば十分間に合うといった状況でした。それが、1970年代、80年?90年代とペットを飼育する方がずいぶんと増え、来院数も私自身驚くほど増えました。ペットを取り巻く環境、社会の変化も追い風となり、動物医療全体が大きく発展していった時期にちょうど私の獣医師としてのキャリアが重なったわけです。
 「時代が変わった」そんな言葉ひとつで片づけられるものではありませんが、動物医療、動物病院の置かれている状況、ペット業界、飼い主様の意識等この10数年で変化してきました。私がこれまで経験してきた動物病院経営とこれからの経営に求められるものと大きく違ってきたのは事実です。「新しく開業しても成功するのは極めて難しい…」と若い世代の獣医師達が感じだしているのもその一例でしょう。
 「事業承継」については獣医師会でも話題になりますし、動物病院だけでなく他の業種(病院や歯科医院も含めて)でも、「うまくいった話」も「そうでない話」もその両方を耳にします。この近くでも1階で親が、2階で息子が、それぞれ別々に診療をしている歯科医院もありますし、同じ世代の獣医師から、せっかく息子が獣医師になったのに別に開業して戻ってこない、というケースも聞きます。親子であっても第三者であっても承継というのは、なかなか難しいものだと感じることが多いように思います。
 高橋犬猫病院に息子が副院長として戻ってきた時から、副院長の話にあるようにケンカは絶えませんでした。私は「経験」が全てです。新しい学術、動物医療を学んだ獣医師とは、診察や治療方針も違いました。私が獣医学を学んでから30年以上も経っているわけですからね。
 しかし、根本的な部分「高橋犬猫病院をどんな病院にしたいか」が副院長と合っていました。「老いては子に従え」昔の人はいい言葉を残してくれていますね。すぐにはそううまくできませんでしたが、そうしていくしかないかと。私自身、この病院よりも獣医師会として、これからの世代の獣医師、動物病院のこれからに道筋をつくれるような公的な仕事に時間をかけるようになりましたので、この病院のことは副院長に任せていこうと。
 今後、動物病院経営はきわめて難しい時代になることが予測されますが、副院長にはこの地域のペット飼育者の信頼をさらに広げていって欲しいと願っていますし、そう確信しています。

親子承継のワンポイントアドバイス

? 毎日けんかばかりでした

 親子承継は「けんかばかりになる」要素を多く持っています。少しでもけんかを回避するためにも、けんかではなく対話の場をつくることが重要です。
 実は「人」のクリニックもそうですが、「動物病院」の親子承継でも、話し合わなければならないことが数多くあるのに話し合いがなされないまま承継がされていることが多いのです。
 ぜひ次のような点について話し合いの場をつくっていただきたいと思います。
 またこの話し合いは当事者だけでなく、顧問税理士等が立ち会い、説明することがより円満で円滑な承継になっていきます。
?経営状況、財務状況の理解
?診療方針の理解と今後の話し合い
?院長交代の時期と交代の方法(退職金支給等)
?新診療体制の方針とスタッフ待遇の変更等
?リニューアルと設備投資

? 承継の前に診療業務を一緒に行うことができるかどうか

 親子承継のよさは親と子が共に診療をすることによって来院者層を広げることにあります。院長の高齢化に伴い、通常は来院者が高齢化します。そこに若い後継者が診療をすることで若い世代の来院者が増えます。親が病気になって急に病院に戻るなど急な引き継ぎは、後継者も、スタッフも、来院者様にも混乱します。十分な準備期間を設けて、つまり一緒に診療を行う期間を設けて事業承継を行っていただきたいと思います。

? 2代目はいいね

 動物病院を取り巻く経営環境が厳しい中、新規開業が一層難しいものになっています。
 その点、事業承継は、「人・もの・金・信頼」すべてにおいて新規開業より優位であるといえます。
 後継者はこのことのしっかりした自覚が必要だと思います。このしっかりした自覚があると、先代に対して「自己主張」より「現状の理解」を優先するからです。現状を理解して現状を引き継ぐことが事業承継の一歩です。決して新規開業のようにあらたな事業を作りあげることが事業承継ではないことの自覚が大切です。

角田 祥子

親子承継のワンポイントアドバイス