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マニュアルの価値と必要性

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マニュアルの価値と必要性

『ベッツワンプレス2011春号(Vol.26)』 掲載分

「マニュアル接客には同意しかねる」「動物病院の応対は、ファーストフードや、ファミリーレストランとは違う」 「マニュアル接客では通用しない」そのような声を動物病院の院長先生から少なからず聞いたことがあります。 本当におっしゃる通りです。しかし、応対の基準が示されず、個々のスタッフが個々の判断と感覚で対応している 動物病院の接客は、一貫性がなく、決め手がなく、何よりも経営者のビジョンが伝わらないなあとも感じています。 これからの動物病院の接客は、スタッフが経営者の意図を理解し、 それを達成するようなレベルの振る舞いができることが重要だと思います。

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見よう見まねの接客
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飼い主としてのキャリアがどんなに長くても、保定の勉強をしていない人の持ち方は獣医師や看護師が見れば、すぐにわかると思います。だから、現場でどんなにキャリアを積まれた看護師さんでも、接客訓練を受けた経験がない方は私にはすぐにわかります。私がわかるということは、接客訓練を受けた経験のある方にはたいていわかるということです。やり方が自己流であれば、判断も自己流ですだから経営者の意図が伝わりにくい。飼い主側からすると、あの人がいい、あの人は嫌と選びたくもなってしまうのです。これからの動物病院はスタッフが一丸となって、自分たちが提供するもの価値やイメージに沿った応対をする必要があると思います。

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動物病院以外で勤務された経験のない方が知っているのは、ほとんどが小売店の接客だと思われます。飲食店、コンビニ、スーパー等が多いでしょう。自分が働く場所での基準がなければ、このような場所で体験したやり方を自分の中に取り込んでしまいます。「バイト語」と言われた敬語の間違いは、多くの店舗ですでに修正されているにも関わらず、動物病院では刷り込まれたまま、まだまだ、使われ続けています。

それぞれのホスピタリティ
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本来、金銭のやり取りは、金銭トレイを使って行うのが常識です。お釣りはお客様が金銭トレイから取り上げ、自分で納得する方法で確認できるのが当たり前です。お客様が必要とするその時間には付き合ってお待ちするというのが、本来のサービスだからです。

しかし、スーパーではレジの人がお札を目の前で数え、手渡しをします。なぜならば、その人の後ろにはレジを待っている人が複数人並んでいるという情況があるからです。一人一人の人が納得するだけの時間をかけて後ろの人の待ち時間を長くするよりは、レジの人が手早く数えて手渡しを行った方が、全てのお客様の満足に繋がるという判断です。スーパーやコンビニのレジ業務においては、その判断は正しいと私は思います。

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一方、百貨店、ホテル、高級レストランは、お釣りを渡す時に金銭トレイを使うという姿勢を変えません。それはつまりお金をいただく時にはお客様が確認するのに使う時間をお待ちするという姿勢を変えないということです。そしてその判断も正しいと思います。スーパーのレジとは情況が違うからです。

ビジネスホテルでは、宿泊費はチェックイン時で支払うシステムが多いです。もちろん、稀ですが、支払わないで逃げてしまう人もいますから、それに対する予防の意味もありますが、朝、チェックアウト時に混雑し、でフロントに列ができないようにするための配慮です。ビジネスマンはお金を払うためにフロントに並ぶ時間分を考えて早起きしなくてはならないようなホテルには泊まりたくないでしょう。

スタッフの応対は経営者のビジョンの表れ
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提供する物の特性や、精算が行われる情況によって、絶対多数の顧客がbetterと受け取れるやり方を「考えて」従業員に訓練してやらせる行為が経営者のビジョンの現れです。

従業員がお金をどう扱うかで経営者の判断と接遇に対する姿勢が一目瞭然に伝わります。金銭トレイの中では金額を確認しやすいように、お札が何枚あるか一目瞭然で判断できるよう、お札の向きを揃えるのは多くの業種の人達にとってごく当たり前の「常識」です。その人達にとってそれをしないのは「非常識」ということになります。

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私の接遇セミナーでは金銭トレイを使うやり方を導入しています。精算時の情況、支払われる金額、飼い主様の心理的状態を鑑みれば、スーパーの導入しているやり方はそぐわないと思います。しかし、動物病院では現実にはスーパーやコンビニのやり方と同じようになさる方も多いです。自分がお客として最も多く見ているやり方だからでしょう。もっと言えば、そのようにするものだと信じている方もいらっしゃいます。もしも日常頻繁に高級レストランに行き、ホテルに宿泊するような生活なら、スーパーのレジと同じやり方はされないでしょう。人間は教育をしない限り、全てを自分の経験から判断します。しかし飼い主様はそれぞれいろいろな社会体験や訓練をされています。当然飼い主様の判断基準で動物のスタッフの行動を見て、病院を評価するということです。

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実は、多くの病院には受付カウンターに金銭トレイはちゃんと用意してあります。金銭トレイを使って精算業務をしたいという意図はあるのでしょう。しかし、あまり使われていないのが現状です。なぜならば、金銭トレイに「飼い主様がお金を入れてくれないから」です。多くの場面でそうですが、動物病院の接客は「飼い主様」が主体なのです。「飼い主様が聞いてくれないから」薬の説明を端折る、「飼い主様が持って来ないから」、診察券がなくても記憶でカルテを出す…そういう判断は臨機応変とはまったく違います。応対のスキル不足が生む現象です。金銭トレイにお金を入れていただくことは簡単なことです。その方法を学べば、おそらくほとんどの飼い主様に金銭トレイでの応対ができるようになります。すぐに、銀行やホテルと同じビジョンが伝わる精算業務になるのです。

薬は責任を持って説明する、カルテは診察券と照合して間違いなく出す…それが安心と安全を伝える正しい業務遂行であろうと思います。

「考えが凝縮された」マニュアル
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何をどのように改善すれば、薬の説明を熱心に聞いてくださるようになるか、診察券を持ってきてくださるようになるか「考える」こと、その考えに向かって努力し、実践することがホスピタリティマインドに支えられた接客スキルです。診察券の渡し忘れが多いので、飼い主様をカウンターに呼んだらまず診察券をお返しする…という方法もよく聞きます。「渡し忘れを防ぐ」という目的においてはよい方法だと思います。しかし、その診察券をしまうのに飼い主様は財布を出し、しまう作業を開始します。
つまり、診察券の先渡しは薬の説明を集中して聞くことができないという現象を起こしてしまうのです。もっとも伝えなければならない説明を自ら伝わりにくくしているのです。この時カウンターの上に明細書などが見えていたらさっさと支払う金額を出しにかかる方も多いと思います。薬の説明は一段と上の空になってしまいます。

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私がご提供するマニュアルは、受付をする、案内をする、フードの注文を受ける、薬の説明をする、明細の説明をする、精算する…飼い主様と接する多くの場面で想定できるあらゆることを、分析して「考えて」作っています。必要な説明を聞いてもらうべき時に、飼い主様が集中できなくなるような順序で応対する等ありえません。現場の状況を十分に理解し、分析して作ってあるマニュアルを使うだけで、今は恐らく認識すらしていない多くの問題が改善されるでしょう。従業員の一人一人に全てのことを理解してもらうには膨大な時間がかかります。だから、なるべくシンプルで多くのことが書きこんでなくても、その業務の目的が十分に果たされるマニュアルほど価値があるのです。プロが作るマニュアルは全てそういうものだと思います。経営者に応対マニュアルの意味を理解していただくことができたら、本当の意味のホスピタリティが提供でき、顧客満に向かう応対に向かって、病院の全てのスタッフが成長し始めるでしょう。

著者紹介

坂上緑
動物病院接客コンサルタント
坂上 緑(さかがみ みどり)
●動物病院ホスピタリティマネジメント研究会代表
●大阪ペピイ動物看護専門学校非常勤講師
●受付業務・接客応対
●動物病院に特化した接客セミナー・講演を全国展開
【出版物】
●飼い主さんとのコミュニケーション講座
●動物病院スタッフのジョブトレーニング講座
●書籍・DVD インターズー
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