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院長に聞く!動物病院の成長マネジメント 三重動物医療センター/ なるかわ動物病院

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院長に聞く!動物病院の成長マネジメント 三重動物医療センター/ なるかわ動物病院

『ベッツワンプレス 2014夏号(Vol.39)』 掲載分

院長に聞く!動物病院の成長マネジメント

私たちを取り巻く社会環境は刻々と変化しています。今後予測されている人口の減少(少子高齢化社会)と犬、猫の飼育頭数の減少、高いレベルの動物医療を望む飼い主の増加、飼育環境の改善や適切な動物医療による長寿化など、地域の動物病院、獣医師、動物看護師にもこれらに対する多様な対応が必要になっています。
この「動物病院の成長マネジメント」シリーズでは、動物病院・院長先生へのインタビューを通して、実際に行っている取り組みや事例の紹介から、「動物病院」が一層発展するために必要なポイントについて考えてみたいと思います。

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開業された時の話を聞かせてください

 当時このあたりは農地ばかりでしたが、私なりに戦略的に考え、7年間の修行を経てここで2000年10月に開業しました。開業資金には1億円を借入しました。土地は父親が建築関係の仕事をしていたこともあり、良い条件で入手することができました。今から考えればおかしな話ですが、開業してからの運転資金を準備せずにスタートしたため、毎日の診察で得た収入から自転車操業で回して少しずつ積み上げていきました。ポジティブな性格なので、患者さんには来ていただけると信じていましたが、初期のころは、色々苦労したこともありました。

当初はどれくらいの患者さんが来られましたか?

 開業して1ヵ月で120から150カルテ程度、1日約20頭の来院数だったと思います。「3,000カルテで病院経営は安定する」、当時はそう聞いていましたので(実際に本当なのかどうかは?ですが…)、まず3,000カルテ集めることを最初の目標にして頑張ろうと。そのため診察費も少し安く設定しました。開業して1年でカルテ 数は1,200から1,300位になり、その後も毎年1,000カルテずつ程度増え、今は1万カルテ位になっています。 しかし最近、カルテ数の伸びは少し鈍ってきました。
 3月から6月頃は、狂犬病の予防注射とフィラリア予防の繁忙期で無茶苦茶忙しい。それ以外の時期も忙しい。とにかく毎日朝から晩まで手術、といった具合で開業以来ずっと忙しい日が続いています。

どんなことに苦労されましたか?

 この病院の立地はロードサイドの商業地のため間口が広く、女性の方でも駐車がしやすい場所です。昔から場所7割とよく言われていますが、まずは場所で、あとは内容です。やはり立地は重要な条件になりますね。でもカルテの増加率が鈍ってきた原因のひとつには初めて来られた患者さんが、待ち時間が長いために離れてしまったことがあるとみています。では病院規模を大きくすればいいのか、獣医師や動物看護師、スタッフを病院規模の拡大にあわせて供給できるか、その判断や優秀なスタッフの育成が重要な問題になります。この場所に開業し集客には正直、これまでそう困ったことはありませんでしたが、人事やスタッフのマネジメントには一番頭を痛めました。
 基本的に出勤日や休日はスタッフで決めてもらっています。週休2日ですが、1日8時間で終わることはまずありません。残って働いてくれている人たちに支えられているのが現状です。その分はきちんと報酬として支払い、できる限り新しいスタッフを入れて業務の負担を減らすようにしています。

多くのスタッフを束ねるのは大変ですね。
スタッフの目標設定や教育についてはどんな方法で?

 私はそれぞれのトップを育てる役割で、各トップが自分の下の者を育てるようにと考えています。私がスタッフの一人一人を直接叱ると委縮してしまい、これではダメだと反省したためで、指導や教育に最も適した人材を充てて、その人に指示を出して新人教育をするようになりました。スタッフに責任を持たせて仕事を任せれば、仕事が面白くなるので離職率も低くなりました。
 また月に一度は内科のカンファレンスを実施し大学教授をアドバイザーに迎えたり、知り合いの先生に来てもらったりしています。私自身も指導しており、院内の勉強会も増えていますので、勉強する意欲さえあれば、知識やスキルを身につけてもらえる環境をつくっています。

 病院にいる獣医師の中には私のセカンドや将来的に経営を任せることができる人も出てきています。そういう人にはセカンドらしくしなさいと言っています。私は手術の時の駒というか、看板の役目で、基本的には彼らだけで病院は十分に回ります。セカンドがいい会社は良いと言われますが、副社長に相当するセカンドが現在2人育っています。そういったことから私の名前が邪魔になってきましたので「なるかわ動物病院」から「三重動物医療センター」に病院名を変えようと今ちょうどとりかかっているところです。

診察や手術費用の設定についてお聞かせください

 たぶん関東、関西の一般的な料金よりも安い設定になっていると思います。しかしクオリティには絶対の自信があります。お金をもらっている以上、プロの仕事、きちんと顧客を満足させる仕事をしなさいと常に言って、それだけは全員で守るようにしています。飼い主さんの満足を与えられたならば、逆に値決めはいくらでもよいのではないかとも思っています。

先生が大事にされていることは?

 診察室では飼い主さんとの対話を大事にしています。獣医師がヒヤリングを行いますので診察が5分程度の短い時間で終わることはありません。少しでも気になる点があれば説明をし、その場で飼い主さんにもご覧いただきながら検査を行えるよう、全診察室にコンピューターや超音波検査装置を導入しています。飼い主さんにも、安心感を与えることができますし、病院としても診察効率を高める効果が得られます。
 院内の医療設備については、積極的に新しい機器の導入を行っています。動物への負担も抑えられ、安全性、正確性も高まります。「命」に代わるものは無く、そこは極力妥協したくありません。この点に関しては設備などへの投資だけでなく、スタッフに対しても投資を惜しまず、人に対する投資にもこだわりを持って行っています。

飼育頭数、特に犬が減少傾向にあることについては
どう考えておられますか?

 犬や猫の飼育動物を増やしていく工夫や努力はとても大事だと思います。犬の頭数が限られて来れば、患者の取り合いになりどんな動物病院もダメになってしまいます。業界の垣根を越えて全体で取り組んでいかないと。犬と一緒に過ごすほうが心臓病などの手術予後が良いというデータ等が数多くあるようで、東大を含めたグループが動物との共生を進める動きをはじめたとも聞いています。そういった情報を社会に浸透させることも、これまで飼ったことのない方にも犬、猫を飼うきっかけにつながるのではないでしょうか。

これからの動物病院経営には、何が必要と
お考えでしょうか?

 見せ方というか「プレゼン力」が必要です。同じものでも見せ方だけで印象は随分違うものになります。成功するためには、今の時代はどんなことも緻密にやらないといけない。料金の設定も、初期の段階と中期の段階、その時に応じたものを考えていかないといけない。カルテ数を増やすための戦略、カルテ数が安定してからはそれに応じた戦略、というものが実際あります。安定的なカルテ数までは絶対的な戦略のもとにやりきらないといけない。そして、私の場合、外科の分野での専門性を自分のものにしようと一所懸命努力し勉強しました。そういった獣医師としての技術・スキルを通して得る信頼もなければいけないと思います。そうなれば「この地で難しい手術ならばあの病院へ行きなさい」と言っていただけるようになります。

また大手の企業病院が全国に展開し、開業病院数も増えた今、地域の動物病院は今まで以上に飼い主さんが何を求めているのかを考えなければいけないと思います。規模の問題ではなく、来院する飼い主さんの求めるものを常に考えて、よりよくしていくための投資をする、そうしていかないといけません。

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病院のスタッフ全員で患者さんに向き合う

 私の病院では寝ぐせや無精ひげはご法度、きれいな襟付きの白衣着用がルールです。患者さんの求めるものとして、病院とそこの人間の清潔感は大事ですから、身なりを整えて印象を良くすることは当然です。そして、飼い主さんに丁寧に説明をすることです。小さな病院なら自分の病院でできないことはきちんとお伝えし、対応できる病院を紹介する。できることはその病院で受けてもらい、ちょっとしたお金でも落としてもらう気持ちも必要です。
 私の病院では全員が、チーム医療で患者さんに向き合っているという意識を強く持っているので、自分でわからないことは上の先生に説明を受けて確認しています。「みんなで治す」、という意識がとても強いですね。しかしチーム医療といっても、獣医師、動物看護師、それぞれ仕事は分かれています。皆にはそれぞれが自分の仕事にプライドを持って当たること、そして勉強も練習も努力もすべて仕事だと言っています。
 私のところに来た人はみんな幸せにしてあげたいというのが根本にありますので、獣医師さんも動物看護師さんも含め全員に、お互いが満足できる報酬を出して有意義な人生の糧にしてもらいたいと思っています。これから様々なビジネスプランを練って、その中で働いている人みんなに幸せになってほしいと考えています。

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最後に

 生川先生は獣医腫瘍科認定医1種(日本獣医がん学会/2014年1月現在全国で36名)を取得されています。その外科手術分野での高い専門性と技術が〈三重動物医療センター/なるかわ動物病院〉の強力な成長基盤になっています。その一方で、「これからの動物病院経営には何が必要でしょうか?」という質問に「プレゼン力が必要」と答えられました。さらに、「飼い主さんに満足してもらうことを常に考える」「そのためにも治療のクオリティは絶対」これらを大事にされているとも話されました。
 確かに、同じものでも、魅せ方次第で受け取り方は全く異なります。充実した設備や卓越した技術だけでなく、スタッフの立居振舞、身だしなみ、言葉遣い、院内の整理整頓など、少しのことでも飼い主さんにとっての印象や満足度は変わります。飼い主さんにご満足いただく為に、病院の全てにおいて如何に見せるか(伝えるか)ということの大切さを改めて実感しました。
 是非、皆さんの病院でも、飼い主さんにご満足いただける「魅せ方」について、スタッフ全員で取り組んでみてください。

<!-- 経営と会計のワンポイント解説 -->

人材育成のワンポイントアドバイス

 生川先生が今までも、そして現在も大きな課題として捉えているのは「人材育成」です。「病院の発展には人材の安定した確保と育成が大切」とインタビューの中でも強く話されていました。
 では人材育成のためには何をすればよいでしょう。簡単なことではありませんが、一言で言うと

(1)スタッフが役割と責任を自覚することができる病院
(2)獣医師以外のスタッフも主役になる病院ではないかと考えています。

 以前に比べると飼い主さんが動物たちと一緒に暮らす時間は随分長くなってきました。動物病院は、動物の病気やケガを治す、予防するといった役割だけでなく、飼い主さんが動物と幸せな生活を長く送るためにどんなサービスや情報を提供していくかという観点がますます大切になり、獣医師だけでなく、動物看護師、スタッフの役割もさらに重要になります。
 私は動物看護師さんが飼い主さんからのお話を色々聞くことで、患者さんとの信頼関係もができ、動物病院がサポートできることが広がり、スタッフが動物病院でもっともっと「主役」になれるのではないかと感じています。
 私が長く関わっている歯科界も歯科衛生士やコーディネーターが歯科医院の主役になることで歯科医院が大きく変化してきました。人材育成の視点で考えると、それが成長する歯科医院とそうでない歯科医院の二極分化の大きな要素だったと思います。
 これからの時代の大きな変化をどのように捉えるか、動物病院の経営も変革が望まれているのではないかと思います。

角田 祥子