猫のからだセミナー 歯編 猫の「歯」は人とどう違うの?

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猫のからだセミナー 歯編 猫の「歯」は人とどう違うの?

ドクターズアドバイスペピイキャッツ2013春夏号

猫のからだセミナー 歯編 猫の「歯」は人とどう違うの?

猫のからだセミナー 歯編 猫の「歯」は人とどう違うの?

猫の歯の基礎知識
猫の歯も生え変わります

 子猫の口の中をじっくりのぞいたことがありますか?猫にも、人と同様、乳歯と永久歯があります。乳歯は、生後2~3週間頃から生え始め、約1ヶ月で生え揃います。永久歯は生後4ヶ月頃から生え始め、通常、6ヶ月頃には生え変わりが完了します。抜けた乳歯はほとんど飲み込まれてしうまうため、飼い主さんは気づかないこともあるかもしれません。
ちなみに猫は、乳歯26本、永久歯30本。人は乳歯20本、永久歯28本(親知らずを含めて32本)ですから、本数自体はそれほど大きな差はありません。一方、犬は永久歯が42本と、口吻が長い分、歯の数も多くなっています。

肉を切り裂きやすい、尖った歯

猫は肉食動物ですので、その歯は、ほとんどが肉を切り裂きやすい先の尖った形をしています。それぞれの歯は、次のような役割を担っています。

切歯

正面に上下各6本ある前歯。獲物を捕らえたり、物をかじったり、体がかゆいときに毛づくろいをするのも、この歯です。

犬歯

切歯の両側に上下各2本ある、大きく尖った歯。獲物に噛みついたり、肉を引きちぎったりします。猫にとっての大きな武器で、戦うときは、犬歯をむき出しにして相手を威嚇します。

臼歯

犬歯の後に続く歯で、前臼歯が上に6本、下に4本、後臼歯が上下各2本あります。人の臼歯は、文字通り臼状で、食べ物をすりつぶす役割をしますが、猫には食べ物を咀嚼する習慣がないため、臼歯も小さく先が尖っており、食べ物を噛み切ることに特化した構造です。

侮れない猫の噛む力

 猫は、犬歯を突き刺して獲物を止めを刺しますが、犬歯を深く食い込ませるには、噛む力が強くなくてはなりません。猫の噛む力は約100kg、人が約60kgですから、なかなかのもの。ちなみにライオンが300kg、最強はワニの2000kgです。

猫に虫歯が少なく、歯周病が多い理由

 猫と人では、口内環境にいくつかの違いがあります。
 まず1つめは、先に述べた通り、歯の形状が違います。人の歯の多くが臼の形をしているのに対し、猫の歯は多くは薄く尖っています。
 2つめは、人の唾液にはデンプンを糖に分解する酵素・アミラーゼが含まれていますが、肉食の猫は本来、炭水化物を必要としないため、唾液にアミラーゼが含まれていません。
 3つめは、人の口内は弱酸性ですが、猫はアルカリ性です。
 こうした違いが、実は虫歯や歯周病の発生率に影響しています。猫の場合、口内がアルカリ性で虫歯菌が繁殖しにくいこと。唾液にアミラーゼを含まず、虫歯菌の餌となる糖が口内に溜まりにくいこと。歯が尖っていて、人の臼歯のようにくぼみに虫歯菌がたまりにくいことなどから、人と比べて虫歯になりにくいのです。逆に口内がアルカリ性のため、歯垢が石灰化して歯石になりやすく、人より歯周病になりやすいといえます。

猫に見られる歯のトラブルとは?
成猫の多くが抱える「歯周病」

 歯周病は、歯垢や歯石が原因で歯の周辺組織に起こる炎症で、口臭、歯肉の腫れや出血などが見られます。成猫の8割がかかっているともいわれるほど、多い病気です。猫の場合、歯垢は3~5日で歯石化するといわれ、予防のためには、できれば毎日、少なくとも2日に1度の歯みがきが望まれます。

猫特有の「歯頚部吸収病巣(しけいぶきゅうしゅうびょうそう)」

 歯頚部吸収病巣は、歯が根本から次第に溶けてあごの骨に吸収されてしまう猫特有の病気です。溶けるに従って痛みが激しくなりますが、予防法や進行を止める方法はありません。対症療法と、ひどくなれば抜歯を行います。
※「歯周病」と「歯頚部吸収病巣」について詳しくは「症状から見つける猫の病気「よだれや口臭がひどい」をご覧ください。

歯が折れる「破折(はせつ)」

 歯が折れたり欠けたりした状態を破折、歯がすり減った状態を咬耗(こうもう)といいます。硬いものを噛むのが好きな犬とは違い、猫ではそれほど多くありません。ただし、事故やケンカによって、犬歯を折るケースや、歯頚部吸収病巣にかかっている場合は、歯の付け根部分が溶けて、そこからポキッと折れてしまうことがあります。
 損傷によって歯髄が露出すると、痛みを感じたり、細菌感染を起こしたりするので、早急な治療が必要です。損傷が軽ければ、歯の欠損部分を樹脂で充填するなどの修復ができますが、損傷がひどければ抜歯が必要になることもあります。