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組織人としての心構え

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組織人としての心構え

『ベッツワンプレス 2009冬号(Vol.21)』 掲載分

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一般企業が導入する新入社員研修では、言葉遣いや振る舞い方など一般的なビジネスマナーを実習する・・・ということは動物病院の方々にも想像できるでしょう。ですが、この研修で最も重要なのは「組織人としての心構え」というマインド研修です。動物病院のスタッフの方々にもお伝えしたいと思いますので、私がしている説明をまとめてみました。

組織の存在意味

組織の存在意味組織は何のために存在するのでしょうか?「社会貢献」です。組織は社会全体が幸せになるために活動します。個人は自分の能力を発揮する場所として組織に所属し、基本的な生活の糧を得ることができます。所属している人達は協力し、社会に安全、安心、利便性など「役に立つ」ものを提供するのです。

複数の人が集まれば組織です。複数人が所属しているなら動物病院も組織です。組織の中で働く人を「組織人」と言います。ひとりひとりが社会の中の組織、組織に所属する自分について共通の認識を持つことで協力関係を築くことは、お互いの幸せのために重要なことです。

組織人は学生時代のように自分の能力を伸ばす努力だけではなく、所属する組織全体が成長することを考えなければなりません。組織全体の問題を発見する力、改善する力、そのために協調する力が必要です。個人として獣医療に興味を持ったように、組織全体にも興味を持つことで個々の総合力が培われ、組織も成長するのです。

皿洗いのアルバイトとしてレストランに雇用された学生は、自分の労働時間分の時間給が支給されればそれでOK と受けとめるでしょう。来店のお客様が少なければ、負担する労働量は軽減されますので、むしろラッキーととらえるかもしれません。100枚洗った時300枚洗った時と報酬が同じであれば、100枚ですんだ日は楽だったと感じるでしょう。自分と所属している組織しか見ないとそうなって当然です。

組織の存在により成立する社会

社会人は社会全体を見渡すことがまず必要です。今日はお客様が少ないから、あなたの担当業務は必要ありませんので帰ってください。その分あなたに支払う金額は少なくなります…という雇い方で全ての組織はOKですということであれば、社会には自分の糧について不安な個人ばかりが数多く存在することになります。当然社会全体の消費力が落ち、動物病院に来る飼い主さんは激減します。社会全体が獣医療を今ほど必要としなくなります。

自分が能力を発揮できる場所があるのは、社会に多くの組織が存在しているからです。自分の所属する組織が生きていけるのは、他の人達もまた、それぞれが所属する組織から糧を得て消費者となっているからであるということを確認しましょう。自分もその絶対多数の一人であると認識する…それが「組織人としての心構え」の第一歩です。「社会全体の中での自己認識」です。社会と自己、組織と自己が関わっていることを明確に言語化し、組織の存在意味を再確認ししましょう。

「お金」の意味

生活を安定させる糧とは「お金」です。人間は労働にエネルギーを使い、「お金という糧」を得るという共通の方法で、地球規模で社会を築いてきました。つまりお金は人のエネルギーです。お互いのエネルギーを交換し合って助け合う…それが人間の社会であり、お金はその交換の手段として使われているということになるでしょう。つまり、自分がエネルギーを出せば、手に入ります。何を目的にエネルギーを出すかは人それぞれです。人の役に立つことが動機で出されたエネルギーと交換に入ってきたお金には、素晴らしい価値があると思います。それで個々が自分の生活を支え、社会の一員として自立するのですから。

組織人としての責任

組織全体を見ないで、エネルギーを自分の仕事にばかり向ける態度をセクショナリズムと言います。固定の人件費が自分に支払われているということは、経営者のエネルギーが常に自分に投入されているということです。「組織人」ならば、組織全体の労働力として300人分の皿を洗うキャパがあるのに、洗う皿が100枚しかなかったら、しかもそういう状況が継続しているならばその現象について真剣に考えなくてはなりません。これが「問題認識」です。

問題認識をして初めて、なぜ100枚分の人しかここに来なかったのか原因を考えることができます。そのようなことを考えることこそがとても「重要な仕事」なのです。私の担当は皿洗いですから皿洗いのことしか考えませんというのでは「組織人としての責任」を果たすことにはならないでしょう。

原因がわかれば、少なくとも想像できれば、状況の改善を試みることができます。改善の方法はいろいろあります。100枚の皿を300枚にすることもその一つだし、200枚の皿洗いで、300枚分の利益を上げることができれば、betterです。そういう組織をお互いの協力のもとすでに作り上げた、あるいはこれから作り上げて行こうとする組織に所属している人はその過程における体験から、個々の能力もかなり向上しているはずです。

動物病院スタッフの組織人意識

専門職に就いている人は、常に自分の知識を充実させるため、技術を向上させるための努力をすることはもちろん必要です。手が空いた時には医学書を読み、症例を研究し、その努力を治療に反映させようとする多くの獣医師、トイレの掃除、器具の洗浄、在庫管理、診察補助、入院動物のケア…数えきれないほどの多種の仕事を担いながら、手が空いた時には更に仕事を探して動く多くの看護師…そういう方々に敬意をはらいます。

皆さんのパワーを持って、興味の幅を拡大し、組織の成長に向けてエネルギーを集結すれば仕事はもっと楽しくなるでしょう。獣医師は継続治療の必要があることを伝えたにもかかわらず、次の来院を中断された飼い主様がどのくらいの割合で存在するのか、看護師は自分の応対した問い合わせ電話の飼い主様を来院へ誘導できたかどうか…まずはそういうところに興味を持ちましょう。

データがあれば、なぜなのか分析が可能です。分析すれば、改善点が見えてきます。予防のための投薬や注射のための来院をドロップしてしまう飼い主様がどれくらいの割合でいらっしゃるでしょうか?どうすれば、そのデータをとれるか等も考えてみましょう。必要な来院をされない…ということは、飼い主様のモチベーションを保つことができていないということです。各セクションでいろいろな説明の仕方を検証し、改善を試み、ドロップを回避できれば、病院への貢献、社会貢献、そして個々の総合スキルの向上が同時に達成できます。人間は本質的に人の役に立った時、自分が成長したと感じた時に、喜びを感じるものです。

顧客満足が提供できるのは満足した人達

動物と同じように、組織もまた社会の中で「生きて」います。経営者を脳とするなら、組織に所属する人達は内臓のようなものでしょう。手足は、物理的にやることがない時は動かさなくてもいいのですが、組織が生きるために臓器は具体的に指示されなくてもそれぞれが活動を自主的にすることが重要なのです。血液はコミュニケーションです。提案、報告、連絡、相談等スムーズな循環が組織を健康にします。健康な組織は所属する人へ安心と安全をもたらします。組織が生きるために必要な食べ物や酸素…外からのエネルギーを供給してくれるのが顧客ですね。病院にとっては飼い主様です。自分たちが所属する場所安心できる環境にしていくことに興味を持ち、楽しく協力し合う・・・そういう人達が、顧客満足を提供できるのだと思います。

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著者紹介

坂上緑
動物病院接客コンサルタント
坂上 緑(さかがみ みどり)
●大阪ペピイ動物看護専門学校受付業務、接客対応コミュニケーション講師
●動物病院に特化した接客セミナー、講演を全国展開
【出版物】
『飼い主さんとのコミュニケーション講座』
『動物病院ジョブトレーニング講座』
書籍、DVD (インターズー)
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